社会人で技術者なら「リスク」のことを知っているでしょう。
特にISO90001と14001が2015年に改正されてからはご存知の方は
多いでしょう。
従来のリスクとは「損失」のみを重視しています。
損失の
「可能性」
「可能性が存在するための条件」
「不確実性」
「期待と現実とのギャップ」
「ギャップの可能性」
すこし、疑問に思いませんか?
日常で使用している
「人やモノに対して被害が及ぶ」事象
は定義されていないことに。
リスクの意味合いは各技術者の経験により変化しています。
理由は定義があいまいだからです。
例えば、「顕在化した事象例:設備の駆動シャフト破壊」を例にしてみます。
リスク① 損失発生の直接原因(好ましくない事象を含む)で考える場合、
「破壊」です。
リスク② リスク①からの損害の可能性(危険)で考える場合、「疲労」
リスク③ リスクが顕在化した時に発生する頻度と強度(起こりやすさ)
で考えると、「生産できない」
通常、リスク①を「リスク」としますが、業界では②③もリスクです。
リスクの評価は、「発生確率x被害規模の大きさ」で定義されます。
いかがでしょうか?聞く人の専門や業界により変化してややこしいですね。
そこで、ISO Guide73で下記の定義になりました。
(1)リスクは「組織」を対象とし、その「目的に対する不確かさの影響」
とした。
ISOが考えるリスクマネジメントは「組織」を対象としているためです。
組織経営で矛盾が生じないように定義したということ。
目的には、「目標」と「結果(ゴール)」も含むこと。
不確かさは、「事象や結果が起こりやすさに関する、情報や理解、
知識が部分的でも欠落している状態」です。
影響は、期待値との乖離で、正の方向、負の方向があります。
リスクマネジメントでは、
不確かさが組織の目的達成に与える影響すべてをリスクとして
マネジメントの対象としている。
リスクを現実表現が困難であるため、
①事象の発生、その結果、または両方の組み合わせ(リスクの特徴)
②事象の結果とその発生の起こりやすさとの組み合わせ(リスクの表現)
としています。
現実的な表現方法は変更なしですね。
(2)結果に「損失」だけでなく「利益」を得る意味が含まれる。
先ほどの期待値との乖離でも書きましたが、これが最も大きな変更点
と考えます。
負の影響だけでなく正の影響もリスクと考えることです。
では、リスクをどのように表現するのか?
「事象(周辺環境の変化)」で書くのが一般的です。
しかし、わかりやすい反面、結果を表さないため要素の連鎖に陥ることが
多々あります。
そこで、このリスクの特徴である「事象と結果」を一連の流れで書くことを
お勧めします。
なぜリスクの定義が変更されたのか?
それは、今が技術の転換期だからである。
転換期は、大きな変化をもって、正の効用を得るものであるが反面、
失敗する(事象)が起こると取り返しのつかない結果を生む
リスクが大きくなってくる。
その正の効用をいかに得るか、負の影響をいかに小さくできるか?
がリスクマネジメントであることを理解していただきたい。
総監の試験で、リスク抽出は負の効用しか書かない人がいる。
特に平成25年度以降は、正の効用に対する意識が大きくなっている。
正の効用があるから、負の効用を低減することを忘れないでほしい。
次回は、「リスクの表現」を補足する。
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