2018年1月27日土曜日

【No88】第2回_リスクの定義


社会人で技術者なら「リスク」のことを知っているでしょう。

特にISO90001140012015年に改正されてからはご存知の方は
多いでしょう。

従来のリスクとは「損失」のみを重視しています。

損失の

「可能性」

「可能性が存在するための条件」

「不確実性」

「期待と現実とのギャップ」

「ギャップの可能性」

すこし、疑問に思いませんか?

日常で使用している

「人やモノに対して被害が及ぶ」事象

は定義されていないことに。

リスクの意味合いは各技術者の経験により変化しています。

理由は定義があいまいだからです。

例えば、「顕在化した事象例:設備の駆動シャフト破壊」を例にしてみます。

リスク① 損失発生の直接原因(好ましくない事象を含む)で考える場合、
「破壊」です。

リスク② リスク①からの損害の可能性(危険)で考える場合、「疲労」

リスク③ リスクが顕在化した時に発生する頻度と強度(起こりやすさ)
                    で考えると、「生産できない」

通常、リスク①を「リスク」としますが、業界では②③もリスクです。

リスクの評価は、「発生確率x被害規模の大きさ」で定義されます。

いかがでしょうか?聞く人の専門や業界により変化してややこしいですね。

そこで、ISO Guide73で下記の定義になりました。

1)リスクは「組織」を対象とし、その「目的に対する不確かさの影響」
  とした。

  ISOが考えるリスクマネジメントは「組織」を対象としているためです。

  組織経営で矛盾が生じないように定義したということ。

  目的には、「目標」と「結果(ゴール)」も含むこと。

  不確かさは、「事象や結果が起こりやすさに関する、情報や理解、
  知識が部分的でも欠落している状態」です。

  影響は、期待値との乖離で、正の方向、負の方向があります。

  リスクマネジメントでは、

不確かさが組織の目的達成に与える影響すべてをリスクとして
マネジメントの対象としている。

  リスクを現実表現が困難であるため、

  ①事象の発生、その結果、または両方の組み合わせ(リスクの特徴)

  ②事象の結果とその発生の起こりやすさとの組み合わせ(リスクの表現)

  としています。

現実的な表現方法は変更なしですね。

2)結果に「損失」だけでなく「利益」を得る意味が含まれる。

  先ほどの期待値との乖離でも書きましたが、これが最も大きな変更点
  と考えます。

  負の影響だけでなく正の影響もリスクと考えることです。

では、リスクをどのように表現するのか?

「事象(周辺環境の変化)」で書くのが一般的です。

しかし、わかりやすい反面、結果を表さないため要素の連鎖に陥ることが
多々あります。

そこで、このリスクの特徴である「事象と結果」を一連の流れで書くことを
お勧めします。

なぜリスクの定義が変更されたのか?

それは、今が技術の転換期だからである。

転換期は、大きな変化をもって、正の効用を得るものであるが反面、
失敗する(事象)が起こると取り返しのつかない結果を生む
リスクが大きくなってくる。

その正の効用をいかに得るか、負の影響をいかに小さくできるか?
がリスクマネジメントであることを理解していただきたい。

総監の試験で、リスク抽出は負の効用しか書かない人がいる。
特に平成25年度以降は、正の効用に対する意識が大きくなっている。
正の効用があるから、負の効用を低減することを忘れないでほしい。

次回は、「リスクの表現」を補足する。

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